日別アーカイブ: 2019年9月26日

言葉の質量

すえひろ行政書士事務所の行政書士 伊藤大介です。

普段何気なく使っている「言葉」ですが,一度立ち止まって考えてみると,その単語,時にはその一字にとても多くの情報が含まれていることに驚かされます。

例えば,「あなたが好き」という一言を例にとってみると,

「あなた が 好き」

の場合,そこには「わたし」と「あなた」の関係しか現れません。

しかしながら,

「あなた も 好き」

の場合,そこには「わたし」と「あなた」以外の「わたしが好きな第三者」の姿が見えてきます。

また,

「あなた は 好き」

の場合,そこには「わたし」と「あなた」以外の「わたしが好きではない第三者」の姿が見えてきます。

「が」「も」「は」はそれぞれ,一文字です。

たった一文字でも,「第三者の有無」や「その第三者に対する私の感情」までも内包させてしまう,文字には大きな質量があります。文字の集合,単語には更に多くの質量があります。例えば,

「りんご」

と聞くと,「たべもの」「くだもの」「赤い」「つやつや」「青森名産」「ニュートン」「種に毒がある」「ひらがな」「林檎」「禁断の果実」「iphone」「白雪姫」…,と沢山の関連する言葉が連想されます。これだけの言葉が連想される質量を「りんご」という単語は持っているのです。言葉は情報を他者に伝達するとても大切な道具です。その為,少ない労力で沢山の情報を伝達するために,この「文字の質量」や「単語の質量」はとても重要な役割を担っています。

一方で,言葉には姿や形,状態を「正確に定義する」という役割も求められています。例えば,

「外国人」

という単語には,「日本人ではない」「外国から来た人」「日本語がわからない」「日本に戸籍がない」と色々な言葉を連想させるだけの質量があります。しかしながら,こと法律や命令,規則を適用する場面ではこの単語のもつ質量が問題となる場合があります。そこで,このような場合には,単語や文字も持つ大きな質量を「そぎ落とす」作業が必要になってきます。

例えば,「出入国管理及び難民認定法」の第二条は,言葉の定義が書かれています。

「外国人 日本の国籍を有しない者をいう。」

これはまさしく,「外国人」という言葉の質量をそぎ落とし,法律の対象となるものを「正確に定義する」作業です。「外国で生まれても,日本国籍を持っていれば外国人ではない」と理解することができます。このような作業は他の法律でも見ることができます。例えば「駐車場法」第二条です。

「路外駐車場 道路の路面外に設置される自動車の駐車のための施設であつて一般公共の用に供されるものをいう。」

これも同じように,「路外駐車場」という言葉の質量をそぎ落とし,「正確に定義する」作業です。「一般公共の用に供されるもの」とあるので「決まった利用者を対象とする,所謂月極駐車場は対象としない」と理解することができますね。

このように私たちは,大きな質量を持った「言葉」というものを利用することによって,「迅速に」そして大きな質量をもった「言葉」というものの質量をそぎ取ることによって「正確に」情報の伝達を他者と行っています。

「言葉」って便利ですが,一歩間違えるととても危険なものなのかもしれません。

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すえひろ行政書士事務所行政書士 伊藤大介
~やっと先生が言っていた「ひとにバカって言ってはいけません!」の意味が分かった気がします。~